初めての気胸

健康体でケガや大病に縁がない人でも
誰でもなんの前触れもなく起こるのが気胸
肺に穴が空いて漏れた空気が胸にたまり、肺を圧迫して機能低下を招く症状である。

病院では二言目には励まされるように
「相葉くんがかかったやつね」
「ジャニーズ病よ」などと言われたが
わたしは細身高身長のイケメンでもなければ
男性でもないし、ビール腹が近ごろ悩ましい体型。

女性には月経随伴性気胸というものがあるが、
症例が非常に少なくて断定しにくいらしい。

闘病中に気胸の体験記を読み漁り、非常に励まされたので、
誰の役に立つかわからないが書いておく。

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夏前のこと。
職場で多少の力仕事をしていると、いつもより体に力が入らない。
数歩あるいただけで息切れがする。
いくら万年運動不足で脂肪しかない体とはいえおかしい。

帰宅して寝転ぶと、仰向けと右向きは圧迫感と激痛、左向きにしか寝転べない。
しかも、寝転んでいるときは呼吸時に
「ぷつぷつ」「ぽこぽこ」と音がする。

違和感を覚えつつも病院嫌いなので、数日放置。
休みの日曜日、いよいよ息苦しさに耐えきれなくなり、救急診療へ車で向かう。
コロナ禍ということもあり、「胸が苦しい」という症状がコロナの疑いに引っかかって病院外の仮設診療所での検査や診察などに回り、ようやく救急外来にたどり着いたのは3時間後。
病院外での診察でコンビニ受診と疑われたこと(胸が苦しいってだけでわざわざ今日来たんですか?と聞かれた)は腹ただしいが、こちらも早く来ようと思えば平日に来ればよかったので我慢。

レントゲンやエコーで胸を見てもらうが、その日の救急外来は慌ただしく、診察室には研修医さんのみでどうにも原因がわからない。
さらに3時間ほど待つと、ベテラン医師が颯爽と現れ「どう見ても気胸で矛盾はない」とさらっと診断。先生かっこいい。

内科医師の到着まで1時間ほど待機する間、研修医さんの勉強のため再びエコーをすることに。
救急外来では事故による気胸はまれに見るが、自然気胸の症例を見ることが少ないらしく、ベテラン医師がレクチャーしながらエコー。こちらとしてもエコーの見方がよくわかってありがたい。
どうやら右肺が握りこぶしぐらいの大きさに縮んでおり、重度の気胸らしい。

内科医が到着するなり、家族に連絡したり入院衣に着替えるよう促される。
えっっ入院ですか!?と聞くと、看護師さんから「十中八九このレベルの気胸なら入院です」と言われ絶望。
今まで大病もケガも何もなく、手術も親知らずの手術ぐらいしか経験ないのに…
わたしがなにした…と言っても、何もしなくてもかかるのが気胸。無情である。

ベテラン内科医が指導しつつ、新米内科医さんの手で胸部穿刺が行われる。
ベテラン内科医が行わないあたり、あまり大事ではないなーとちょっと安心する。
気胸の初期治療には穿刺とドレナージがあり、ドレナージは確実に入院が必要。今回は初めての気胸なので穿刺で簡単に済ますことになる。よかった…

胸部穿刺は右脇のあたりにやや太めの注射針を刺し、肺に溜まった空気をどんどん抜いていく方法。傷跡もほぼ残らない。
もちろん局所麻酔されるため、痛みはほぼ感じない。
1時間ほどで全部抜けたのではないかと思う。

施術後にレントゲンを撮ると、しっかり肺が膨らんでいたため、入院をせずこの日に帰れることに。
とはいえ帰ったのは真夜中だったが…


翌日と、1週間後にそれぞれ通院でレントゲンを撮って、穴が完全にふさがって空気漏れが無いことを確認して治療が完了した。
思ったより簡単に終わってほっとしていたところ、診察の最後に「気胸は再発率が高い病気なので、次起こった場合は入院や手術を覚悟してください」と言われ、不穏な空気を感じる。